筆・刷毛の原材料について
1. イタチ毛 胴体の毛は毛皮として使用されるため、尾の毛のみを使用する。
イタチ毛は産地によって次のように特徴が異なる。


日本産 毛の色は濃い茶色。尾の長さが短い毛には弾力があるが、毛先は中国産より悪い。
現在は捕獲頭数が少なく、筆の材料としてはあまり使用されていない。
韓国産 毛の色、毛先は中国産に近いが、過去に動物保護のため捕獲禁止に指定され、
日本では筆の材料として使用されていない。
中国産 現在、筆の材料としては、99%は中国産の毛を使用している。産地には、
華南、華中、華北があり、その中でも特に、華北の毛が一番良いとされている。
長い尾で、毛も長く、毛先の良いものがコリンスキーと呼ばれている。
2. 狸毛 胴体の毛を使用する。尾の毛は縮みがあり、筆には使用しない。
背筋の毛は黒狸、腹毛は白狸、他の部分は合狸と呼ばれ、筆の種類によって使い分けられる。
狸毛は産地によって次のように特徴が異なる。

日本産 中国産の毛に比べ毛先が良いが、弾力は少し弱い。主に面相筆に使用されている。
しかし、捕獲頭数が少なく、毛の入手は困難である。
中国産 毛先は日本産に比べ悪いが、毛は弾力に富み、面相筆以外の筆に多く使用されている。
3. リス毛 毛質が柔らかく、主に水彩筆、化粧筆に使用される。
4. 猫毛 毛質は柔らかいが毛先は太く、絵具を含ませると毛先が丸くなるので玉毛と呼ばれている。
(玉毛)   背筋の毛のみ使用される。蒔絵筆に使用される。
5. ウォーターバジャー 毛質は硬いが毛先が悪いので、油絵筆や大筆の腰毛に使用している。
(アライグマ毛)
6. 山ウサギ 背筋の毛は紫毛と呼ばれ毛先が良く、弾力に富む。
  線書、細字書等に適しているが、材料の入手が困難で、高価な原毛である。
7. 羊毛 羊毛と呼ばれる毛は中国産の山羊で、日本産の山羊とは全く毛質が異なっている。
日本産は使用して年月が経っても毛に弾力は出ないが、中国産は使用すればするほど、
 毛に弾力が出てくる。
現在中国より輸入されている羊毛は、一頭より役18種類に選別され、絵筆、刷毛、書道筆等、
 毛の特徴に分けて使用される。
毛質の良い細微毛(毛先が透明に近いアメ色の毛)は、上質の羊毛筆に使用される。
毛質の悪い毛は、塗装用刷毛等に使用される。羊尾と呼ばれる尾の毛は、弾力に富んでいるため、
 筆の芯毛に使用される。

8. 鹿毛

鹿には多くの種類があり、日本産や寒い地域の種は、主に染色の引き染め用刷毛に使用される。
また、暖かい地域の種は、筆の腰毛として使用される。
例外として、東南アジア地域のサンバと呼ばれる種は、胴毛を筆の腰毛、雄のたてがみを太筆に使用される。
毛の硬さは現在、原毛の中では一番硬い。ただしこの動物は、ワシントン条約にて
 捕獲禁止になっており、輸入できない。
9. ナイロン毛 日本産の人工毛で、東レ、帝人が開発し、当初は化粧筆等に使用する目的で生産されていた。
その後、アクリル樹脂絵具が多く使用されるようになり、現在はアクリル絵具用筆の原料として使用されている。
材質は、毛の太さにより3種類に分かれ、硬い毛は天然毛と混毛し、腰毛に使用されている。
油絵用、トールペイント用等、材質により種々の筆の材料として使用される。
10.牛耳毛 牛毛は耳の毛のみ使用され、通常はオックスと呼ばれている。油絵筆の軟毛筆として使用される。
また一部は、水彩用筆として使用される。
11.馬毛 馬毛は、胴体(胴毛)、尾(尾脇毛)、足(足毛)に選別される。
 胴毛は柔らかく、主に筆の上毛(筆の外側の毛)に使用される。胴毛の中で、特に硬い毛を選別し、
染色用差指、片羽刷毛に使用している。
弾力に富んだ尾脇毛(尾毛の胴体から約20cmまでのところにはえている毛)は、太筆等に多く使用される。
足毛は毛先が悪いので、主に牛耳毛と混毛して、油絵用筆に使用される。
12.豚毛 毛は約17cmあり、根元から靴ブラシ、洋服ブラシ、歯ブラシ等に使用され、残った先の毛を筆に使用する。
産地は中国が多く、特に重慶産の毛が上質で多く使用される。
日本産、中国の他の地域の豚毛は毛質が悪いため、低価格の筆に使用される。